あの人が来なくなってから幾日が過ぎただろうか・・。
約束の桜見に行き、いつもとは違ったひとときを共に過ごしたあの人は
今、何をしているのだろう。
「上総・・暫くここには来れない」
「お仕事お忙しいの?」
「あぁ。ちょっとな」
新撰組一行は大坂で将軍警固をするように命じられていた。
近々出発の準備やらで忙しくなるだろう。
もちろん京での仕事が出来ない為、
土方にとっては暫くは忙しい日々を送る生活となる。
考えば、嶋原へ来る時間さえないくらいの忙しさだ。
「すまねぇ・・」
「なんで土方さんが謝るの?お仕事だから仕方ないです」
少し淋しそうな表情で、私は貴方を見上げた。
仕方ない・・だってお仕事だもの。
土方さんが毎日嶋原へ来てくれるのだって
必死にお仕事を終わらせて私に会いに来てくれているのだから。
でも、私の元にいつも来てくれることが当たり前のようになってて
心が切ない程、淋しくて哀しくて・・。
その気持ちが顔に出ていたみたいで、
貴方はそんな私の表情を見て淋しい顔をする。
そんな顔しないで。
私が勝手に貴方がいないことを淋しいと思っているだけだから。
哀しいと心で思っているだけだから・・。
「そんな顔しないでくれ・・」
土方は瞳を潤ませる上総をそっと自分の身体に引き寄せた。
「いつ・・帰ってくる?」
「一月程したら京に戻ってくるから」
上総は必死に土方にしがみつく様に着物を握り締めた。
彼の体温を忘れないように、感じる温もりを覚えたかったから。
今日も私は何時もの様にお座敷へと足を運んでいる。
土方と同じ馴染みの客。粗相のないように接しなければならない。
なのに
心の中は貴方でいっぱいで胸が苦しい・・・
切ないの
その切なささえ私は愛しく感じる
大丈夫。
きっと帰ってきてくれるから。
だから私は貴方が来るまで待ち続けるの。
この嶋原、遊郭の座敷の上で舞を踊りながら・・。
上総は今頃何をしているだろうか・・。
新撰組は将軍の下阪警固の為に将軍が帰京するまで約三週間在阪し、
そして今、帰路の護衛にも加わっている。
予定よりも早く京に戻れることに心が跳ね踊り、居ても立ってもいられない。
だが今は仕事中。抜けるわけにも行かず、ただ警固しながら歩いている。
上総・・
愛しい人の名を心の中で呼んだ。
会いたくて、抱き締めたくてたまらない彼女の名を。
京に帰ったら、彼女に自分の想いを伝えたい。
いや・・必ず伝えよう。
愛している、と。
4話作成遅れましてすみません。
なのに後編かなり短い・・あわわわ。
2人の心境編でした。
次回から色々と問題が出てきます。
遊郭ならありがちな話になるかと。
背景の花はハナニラ。花言葉は別れの悲しみ。
10/22 10/24
