あれから幾日が過ぎたであろうか。


暖かくなり、京の町にも桜の桃色の色と散る花びらが人々に春を告げている。



今日は約束していた日である。



月の光が仄かに輝く夜に出逢っていた二人だったが

今日は約束の桜見の日。互いに初めて、昼間に相手を見るのだ。

花魁は夜は華やかな着物を身に付けて、客の前に現るのが仕事であるが

昼間は休んでいる最中でもあり、町娘のような着物で買い物をする花魁もいる。





昨日、土方は今日の分の仕事も全て終え、上総を迎えに足を運んでいる。

いつもと変わらぬ格好で、自慢の早い歩きで上総の待つ置屋へ向かった。





戸を開けると女将が奥の部屋から出て来た。

店に入ってきたのが土方だと知ると、二階で準備している上総を呼ぶ。

もう何度も通っている馴染みの店でもある為、顔を覚えられているのだ。

用件を言わなくても、上総から用件は伝えられているので何もしなくてもいい。

ただ上総を待つ時間がとても待ち遠しくて、じっとしていられない自分がいる。





暫くして彼女の声が頭上から聴こえた。



「お待たせ致しました〜」



急な階段から慌てて降りてくるものだから、上総の身体が真下に落ちそうになり

驚いた土方は咄嗟に上総の身体を抱き締めるように華奢な身体を受け止めた。



「お前なぁ・・」

「あ。・・堪忍どす」



怖かったのか涙目になった顔を必死に笑顔にしようとする。

土方は身体を支えてそっとその場に座らすと安心させようとそっと抱き締めた。

上総も土方の優しさを素直に受け止めて、彼の胸の中で先程の震えを落ち着かせた。





「もう・・大丈夫。おおきに」



ゆっくり立ち上がる上総を見ると、その姿に土方は驚いた。

夜の華やかな姿とは違い、薄い桃色の着物に桜の柄が入った小紋姿。

袖も少し長めで、小さくて白い手には着物と同じ桜の巾着を持っている。



町娘よりもその姿は初々しく、可愛らしかった。





「・・ほら。いくぞ」



頬を赤らめて、上総の手を繋いだ。

褒める言葉もないただ手を繋いで店を後にする照れている行動に

彼女も頬を染め、否定することなく彼の後をついていった。









場所は東山の清水寺。

毎年、この場所の桜はどこよりも綺麗で見物だと有名である。

清水に着くなり、上総は嬉しそうに微笑んで寺の奥へと土方を引っ張るように歩いた。



「ほら。桜も綺麗どすけど、このお花も綺麗どすなぁ」



麗らかな春の訪れを彼女は桜だけではなくて、

他に咲き乱れている花々や暖かな空気、人々の明るい着物の色から感じ取っている。

彼女は春を様々な面から捉え、感性豊かなのだと土方は感じた。

そして、あの店とは少し違った上総を見れて、驚きもあり嬉しかった。







「この桜が一番綺麗だ」



「本当どすなぁ・・綺麗・・」







そして、儚い・・







彼女の意味深な言葉を土方は聞き返さなかった。

きっと彼女は辛い時を過ごしてきているのだと思ったから。







「上総・・」

「なんどすか?」

「お前、京の生まれじゃないだろ?」





上総は土方の言葉に正直驚いた。

自分の生い立ちについて話したことはないし、第一、店の人たちが話すとも思えない。

どうしてそんな事を知っているのか不思議で仕方なかった。





「どうしてどすか?」

「京言葉、苦手そうに話しているから・・」

「・・・」





反論は出来なかった。



先輩である姐さんにも京言葉が上手く話せてない、と

何度も怒られて、何度も練習したこともあるのだから。



「そんなに・・違うやろか・・」

「少しな。今日一緒に過ごして俺が思っただけかもしれねぇけど」

「いいえ。苦手なんどす」



はにかんだ表情で上総は土方を見た。

彼は大きくて暖かい手で髪を撫でてくれる。



「俺の前では、普通に話してくれよ」

「え?」

「京言葉ではなくて、お前が普通に話してきた言葉・・聴きたいんだ」





そんなこと上総には一度も言われた事がなくて

京に来てから京言葉で話さなければならない毎日で。

そんな風に言ってくれる人がいることがとても嬉しくて、上総は目に涙を潤ませた。





「・・・はいっ。わかりました」







この人は私を理解してくれる唯一の人かもしれない。

お客様じゃなくて、なんだか貴方が恋人のようで。



もっともっと・・貴方の事が知りたい。



互いの事を話し合えるような関係になれればいいのに・・。






















今回は少し長め。総司の心が揺れ動いております。

でも、なんだか不安もあり、でも求める気持ちもあり。と

いうような複雑なお話になっているのですが、表現が難しくて

お話読んでくださっている方に伝わっているのか心配です。

もし宜しければ、一言メッセージに本当に一言でいいので

ご感想頂けると本当に嬉しいです。お願いします。

上総は京の人間ではありません。色々あって京に来たので

京言葉に慣れていないのが現状。気づいた土方さんに拍手ですね。笑

背景は桜。染井吉野という種類。花言葉は優れた美人。

今回2人はお昼に会っているので背景は白色です。



10/14






桜舞風/TAM Music Factory