桜の下の悲鳴が聞こえますか
雨が涙を流してくれるというならば
天上の華に逢えない貴方を想う
雪が解けるようにこの想いも忘れてしまわないで
玲瓏たる音 風花の下の華衣
動乱の世、幕末。
尊皇攘夷と倒幕と様々な諍いがある世の中で
癒しと恋とを求める男達が訪れる花街と呼ばれる場所。遊郭、嶋原。
華やかな花街でここ最近、別嬪で優しき姿の太夫がいると噂が絶えない。
その人物とはお座敷専用であり、情事には全く関与しないのだという。
その為か、別嬪な太夫を我が物にしようと通う男も少なくなかった。
京都の下京区にある遊郭は正式には西新屋敷と呼ばれ、六つの町で構成されており、
太夫・芸妓を派遣する店「置屋」と置屋から太夫等を呼んで宴会を催す場所「揚屋」がある。
角屋と呼ばれる揚屋に今宵は新撰組一行が芹沢局長に持て成され、
壬生浪士組から新撰組へと結成した以来の、久々の宴会を楽しんでいた。
「近藤さん、いいのか?」
「・・・なんだ、歳」
幹部達は隊士とは違う場所へ部屋を移動し、酒を飲み交わしていた。
そのなかで土方が芹沢の行動に不満を持ち、近藤に話し始めた。
「だいたい・・この宴会の金も金融屋から脅して作った金だろ?」
「今は黙っておけ。そのことは私が明日芹沢さんにちゃんと話すから」
近藤がその言葉を発した後は土方も何も言わず、ただ酒を飲み続けた。
花魁の下っ端であろう遊女が酒を猪口に何回も注ぐ。
白粉の匂い、酒の匂い、そして気分的にも色々と不満な事が溜まっているのか土方の表情は険しかった。
その所為か、土方と話すのは昔ながらの友人である近藤だけで
他の幹部達は自分へその怒りがこないようにと土方と少し離れたところで宴会を楽しんでいるようだ。
ここに来て時間も一刻は過ぎたであろうか・・
そろそろ宴会にも飽きてきた頃、開かずの襖がそっと開いた。
「お待たせ致しました・・」
花魁の身の回りの雑用をする禿が芹沢の仲間である平山に話しかけている。
禿の着物の袖には鈴がついており可愛らしい音が部屋に響き渡った。
それが合図。禿の鈴の音が聞こえれば太夫が近くにいる事を皆が知っている。
芹沢が部屋に入ることを了承すると、牡丹の花柄が入っている襖が左右に開いた。
「上総太夫〜」
二人の禿が言葉を発すると同時に、座敷に優雅な太夫がゆっくりと歩き入り、座った。
その姿に見惚れない者はいないだろう。
あの白い肌は決して白粉の色ではない、真っ白な雪のようで。
華奢な細い身体に、淡い桃色と紅い着物を纏っているその姿。
凛とした太夫独特の誇りに満ち溢れた瞳。
澄んだ声で挨拶をして、幹部へ順番に酒を注いでいく。
そして、土方の前にも上総は座り、挨拶をした。
「土方様は今宵が初めてどすなぁ。上総申します。来て頂いてほんまうれしおす」
にっこりと微笑んで、可愛い顔が更に可愛さを増した。
全員に酒を注ぎ終わると、芹沢の希望で上総が舞踊を披露した。
一緒に座敷にいる遊女達も見惚れる程の綺麗な舞に尊敬の眼差しと、
男達の恋する瞳とが集中したなかで上総は舞い続ける。
蝶よりも華よりも可憐なその姿に土方は一目で見惚れてしまった。
恋をした。
遊郭話スタートです!お待たせ致しました!
・・・といっても総司(上総)と京言葉って似合わないかも・・と
作成しながら思った由季であります。笑。
そして土方氏。初めから一目惚れ設定です。
ん〜・・でもそうしないと通う理由がなくないですか?
まだ遊郭について勉強中ですので・・。
ちょこっとだけ史実取り入れたりしていますが、総司がいない新撰組って・・・苦笑。
10/1
